(私……夢でも見てるの?

さっきまで確かに、ホテルの一室だったのに……)


茫然とする私に、彼はすっと手を差し出した。


「さぁ、うららプリンセス。私と共に帰りましょう」

「えっ……」


(うららって……どうして私の名を?)


あり得ない出来事に比べると、あまりにも些細な疑問。

でも、私はどういうわけか、何の違和感もなく自分の手の平を彼の手に重ねて。

彼は、その扉……ホテルの扉だったはずの場所にあった、やはり黒豹柄の扉を開けて私の手を引いた。

そして私は、彼に手を引かれるがままに、その扉をくぐってしまった。