数日後。家臣の伝令を聞いたうららの顔からは、サァッと血の気が引いた。


「え……お父様が捕まった!?」


ヴォルブへの交渉に出て行ったきり、国王は帰って来なかったのだ。


「あぁ。父上はどうにか穏便に済ませようとしたが……仕方がない。ヴォルブがそういうつもりであれば、こちらにも覚悟がある」


血の気の盛んなアルビン王子……うららの兄は歯ぎしりをした。


「ちょっと、待って。ヴォルブに立ち向かっても、どうやっても勝ち目はないわ。お兄様……お兄様にまで何かあったら、私……」


うららの目から涙が溢れ出た。

しかし、王子の意志は固かった。


「いいか、うらら。私は必ず、父上……国王を連れて戻って来るし、お前のことも絶対に守る。だから、暫し、待っていろ」

「嫌よ、お兄様。行かないで!」


うららは悲痛な面持ちで叫ぶ……

しかし、そんな想いも虚しく、アルビン王子はヴォルブに攻め込んだ。

だが……強大な国力をもつヴォルブにとっては、アルビンを迎え討つなど赤子の手をひねるくらいに容易いことだった。

アルビン王子は敢え無く討たれたのだ。

さらに、その戦乱が引き金となり、アルビンの城に暮らすうららの肉親は処刑されることとなった。


「私の所為よ。私の……」


それ以降ずっと、うららは部屋にこもり泣き明かした。

そして、うららの目から涙がより流れ、傷がより深くなるにつれて……うららの手の甲の白い痣は、より一層、明確に浮かび上がっていったのだった。