「私は大丈夫。黒豹の血族の治癒能力は常人を遥かに凌ぐ。だが……うららは大丈夫か?」


レオパードは神妙な面持ちで私に尋ねた。


「えっ……私?」


大丈夫かと聞かれたけれど、どこも痛いところはなかった。


「どこも怪我もないし、全然大丈夫よ」

「いや、怪我ではなくて……」

「そう言えば、あいつ……フェニックは?」

「えっ……」


レオパードは眉を寄せた。


「何も……覚えてないのか?」

「何も覚えてって……何か、あったの?」

「あ、いや……何でも」


私が不思議に思って聞くと、レオパードは何かを察したかのようにはぐらかした。


「私達はあの後、無事に逃げ切って帰って来れたんだ。それ以外のことは何もない」

「えっ、いや、でも……」

「うららは兎に角、ゆっくりと休みなさい」


彼はそう言って微笑んだ。




(何……何か、あったの?)


レオパードが部屋から出て行ってから、私は一人で考えた。


(私……何か、記憶をなくしてるの?)


それは、奥歯にものが引っかかっているような、もどかしい感覚で。

だけれども、思い出そうとすればするほどに分からなくて。

そのうちに私は猛烈な睡魔に襲われて、再度、深い眠りについた。