黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス

その時……左肩を押さえるレオパードの右手の指の隙間から、赤いものがポタポタと滴り落ちるのが見えた。


「レオパード! その肩……」

「私は大丈夫だ。それより、うらら。私があいつの注意を引き付ける隙に逃げろ」

「え、そんな……嫌よ。私、あなたのことを置いてだなんて……」


私がそこまで話すとほぼ同時だった。

そいつ……フェニックが変化したオオカミは凄まじいほどの跳躍力をもって一瞬にしてこちらへ移り、レオパードの腹部に爪を突き立てたのだ。


「グァッ……」

「レオパード!」


彼は傷口を押さえて屈み込んだ。


「レオパード、レオパード!」


私の顔からは血の気が引いていた。

しかし、そのオオカミは情け容赦なく次の攻撃の準備をしていた。

私はレオパードの前に立ち……黄色い光を放つオオカミを睨んだ。


「どうして……何で、お前は私の大切な人を傷つけるの?」


大切な人……いや、ほんの一昨日までは知らない人のはずだった。


(なのに、どうして……?

私はこんなに辛くて苦しくて。

怒りを抑えられない……!)


そいつを睨む私の心は、みるみるうちにある感情に支配された。

それは自分以上にかけがえのない人を傷つけるものへの怒りと……憎悪!