黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス

(すごい……何、これ)


それは私には信じられない光景で。

だけれども、その赤い球はぶつかるとただではすまない……恐らくはフェニックを粉々にするほどの物質だということは分かった。


『ダガァーン!』


凄まじい音とともに、巨大な赤い球は家の壁を崩壊させて……フェニックの体を飲み込んだ。


「やった……」


私はその、信じられない光景に体が一気に脱力し、目眩を起こした。

しかし、その瞬間!


「ガルゥ!」


まるで猛獣のもののような声が空気を震動させた。


「危ない!」


一瞬、何が起こったのか分からなかった。

ただ、私に向かって一直線に、まるで刃のように鋭い牙が飛んできて……

瞬時に身を呈して私を庇ったレオパードの肩に、その牙が突き刺さったのだ。


「グゥッ……この!」


肩に牙を突き刺した主をレオパードが力の限り振り払った。

すると、そいつは軽やかに着地してその鋭い眼光を私達に向けた。


「こいつは……」


黄色い光を放ちながら毛をたなびかせて牙をむき出し、こちらを睨んでいる。

そいつは人間ではない、猛獣……

だけど、私には分かった。


「フェニック……」


そいつは、先程の人間の男性とは似ても似つかない姿だった。

だけど、私はそう、確信したのだ。