黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス

ペガサス車に乗るのも慣れてきて、昨日と比べるとかなりリラックスできるようになっていた。


私は彼の隣……空に向かって駆け上がりながら、ぼんやりと考える。


(この気持ち……どうしてだろう?)


元の世界からいきなり別世界に連れてこられて、訳が分からないはずだった。

だけれども、彼……レオパードと関わっている日数も少ないはずなのに、こんなに安心できて、心地よくて。

どうしても、一人で危険な目には合わせたくなくて、唇を重ねたくて。

切なくて仕方のないこの気持ち……私は初めて感じる気持ちだった。


(これってもしかして……恋?)


自分は決して恋をすることなんてないって思っていた。

そう、あの日……あまりにも無知な自分が汚されてから。

なのに、それなのに、私は今、隣にいる彼に対して涙が出そうになるほどの想いを抱いているのだ。

これって、単に、私が前世で彼の妻だったから?

それとも……。




ペガサス車は、昨日の家……町の中心からやや外れた、ジョンとエマの住んでいた家の前に着いた。


「うらら。着いたけど……決して、片時も私のそばを離れるな」

「ええ」


私はレオパードの左腕をそっと掴んで、彼に寄り添うように降りた。

彼の元を離れたくなかったからこの家にまで来たのだけれど。

昨日見た光景……八裂きにされたお母さんの姿が頭の中でフラッシュバックして。

知らず知らずのうちに、私の体は小刻みにガクガクと震えていた。