黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス

ジョンとエマが子供部屋へ戻ると、レオパードは軽く武装をし、外へ出る仕度を始めた。


「これから、外回りに行って来ます」


彼はそう言って、城を出ようと門の方へ向かって……

けれども私は、思わずそんなレオパードを引き留めた。


「待って! 何処に行くの?」


すると彼は、ペガサス車の御者に合図をしながら振り向いた。


「ジョンとエマの家があったあたり……ウルフの血族が戻って来ていないか、調べに行く」

「私も行くわ!」


私の口をついて、真っ先にその言葉が出た。

するとレオパードは、私を見つめて……

しかし、目を閉じて首を振り、きっぱりとした口調で言った。


「ダメだ。ウルフの血族の者はすごく獰猛で残酷なんだ。うららを危険な目に合わせるわけにはいかない」

「そんな。私も行くわ。だって、私……あなたの妻ですもの」


言ってしまってから、自分の口からあまりに自然に出た言葉に驚いた。

私は彼……レオパードと結婚した覚えもない。

寧ろ、突然に異世界のプリンセスなんて言われて戸惑うばかりで……

だけれども、私の中の、奥の奥の私は、確かにレオパードの妻なのだ。

私の中には自分の運命を未だ受け入れられない反面、彼をこの上なく愛しく想う気持ちがあった。



レオパードは私のそんな複雑な気持ちを知ってか知らずか、やはり首を横に振った。


「ダメだ。行かせるわけには……」


その時……私はほぼ反射的に、彼の唇を自分の唇で塞いだ。