黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス

彼らの話を聞いた私の目には、じんわりと涙が浮かぶ。

だって、私にはどうしても他人事に思えなくて……


「そう……病気のお母さんのために」


話によると、その兄妹の母親は病気で寝たきりで。

だけれども、貧乏な彼らの家では母に薬を買う余裕もない。

だから、その兄妹はせめて母親に果物を食べさせてあげたいと、町はずれで森も近いこの場所まで探しに来たということだ。


「でも、この辺りはオオカミがうろついていて、僕達みたいな子供はさらわれるんだ。だから僕が、エマを守らなければいけないんだ」


ジョンというその男の子は、幼いながらも強くしっかりとした口調でそう言った。


「そう……妹想いで優しいのね」


私はジョンのその言葉に、ジワっと温かいものが込み上げた。

しかし……


「オオカミ……」


レオパードはそう呟き、眉間に皺を寄せて難しい顔をした。


「ジョンくん。オオカミがうろつくようになったのは、いつくらいから? 何人くらい、さらわれた?」


するとジョンは少し考えながら口を開いた。


「この間の冬からで……この近所の子供達はもう、十人くらいさらわれたんだ」

「さらわれたのは……いなくなったってこと?」


レオパードが続けて尋ねると、ジョンはうなずいた。


「うん。大人がどんなに探しても、見つからないんだ。前まではこの町は、夕焼けが出るまでみんな遊んでたのに、オオカミにさらわれるようになってからはみんな、ほとんど外に出ないんだ」