黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス

レオパードと共にその町を歩くにつれて、私の胸はウキウキと踊った。


「わぁ、すごい綺麗。お洒落な町ね!」


私は赤レンガ造りのその町並みにはしゃいだ。

だって、こんな西洋風の場所……映画とか本の中でしか、見たことがなかったのだ。




そんな私とは対照的に、レオパードは国民に遭遇しないかどうか、気がかりで仕方ない様子だった。


「うらら。もうそろそろ戻らないと国民が出て来てしまいますよ。王族がいると知れたら、大騒ぎになってしまいます」

「大丈夫。あと少しだけだから」


心配そうな顔をしているレオパードを他所に、私はワクワクとその美しい町を見回していた。

だけれども……そんな美しい町なのに、どういうわけかひっそりとしていた。

少なくとも、赤レンガでできた道路には人の気配一つない。

まぁ、元々、人を避けて町の端っこに来たわけだから当然といえば当然だけど、人の話し声くらい聞こえてもおかしくないはずなのに……

そんなことを不思議に思っていると、向こうの建物にちらっと小さな人影が見えたような気がした。


「あれ……誰かいる?」

「うらら。まずいです、帰りましょう!」

「大丈夫よ。見間違いかも知れないし」

「いや、そういう問題じゃあ……」


レオパードは止めるも、私の好奇心の方が勝って。

私はその建物へ走った。


「こら、うらら……」


レオパードがそう言った時には、私はもうすでに、その人影の正体を見つけていた。