黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス

あまりに綺麗なパンターの風景を見ていると、ここの人達の暮らしぶりが気になった。


「ねぇ、レオパード。この国の人達は、どんな所に住んでいるの?」

「森の中に所々は開けた村もありますが、大半はパンター・タウンに住んでいます。もう少しで到着しますよ」

「ふーん……」


私は上空で風を切りながら、美しい国を見下ろした。

かなりの高度のはずなのに全然怖くなくて……それは、隣にいてくれるレオパードのおかげなのかも知れなかった。

だって、ペガサス車に乗っている間もこの手を握ってくれる彼の体温は優しくて、心地よくて……とっても安心できるのだ。



森を抜けるとガラリと景観が変わり、やがて現れた美しい町並み……

レオパードはそれを指さしてにっこりと微笑んだ。


「こちらがその、パンター・タウンです」

「わぁ。これが、パンター・タウン……」


遥か上空から見下ろすその町は、全部の家が赤レンガ造りで。

西洋の雰囲気が漂っていて。

降りて、この町を歩いてみたい……

一度そう思うと、私は我慢できなくなった。


「ねぇ、降りてみたい。どんな町なんだろう……」


するとレオパードは、少し困った顔をした。


「ですが、今日、こちらに来たことも予定外のことでして。また日を改めて、国民に周知の上で最大限の警備をしてからの方がよろしいかと……」

「警備? そんなに危ない町なの?」

「正直に言うと、治安はそれほど良くはありません」

「ふーん……でもやっぱり、行ってみたい。人目につかない場所にとめて、少し見るだけだから! ねっ、いいでしょ?」


レオパードは渋い顔をしていたけれど、私の必死の懇願に折れる形で、町の外れに少しの間だけペガサス車をとめてくれることになった。