黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス

「それは、黒豹と白豹の同盟のためです」

「同盟?」


レオパードは真っ直ぐな瞳で私を見つめ、説明を始めた。


「もともと、この世界の三国……アルビンとパンター、ヴォルブはその力が均等に、拮抗し合っていました。しかし、ウルフの血族の統治するヴォルブは、ここ数年で甚だしく国力を伸ばしました。それだけではありません。ウルフの血族はアルビンやパンターに侵攻し、国民を大量に虐殺するようになったのです。そこで、アルビンとパンターが同盟を結んでヴォルブと戦う。そのため、うららプリンセスはアルビンから嫁いで来られたのです」

「つまり、政略結婚……」


口には出したものの、その言葉はひどく現実味がなかった。

だって、前世の私はこともあろうに政略結婚していただなんて。

あまりにも実感が湧かなかった。


「はい、そういうことになりますね」

「そんな……転生する前の私は嫌だと言わなかったの?」


考えられなかった。

前世とはいえ、私がそんなことを受け入れていただなんて。

すると、レオパードはすっと目を瞑った。


「最初は恐らく、嫌がっておられました。元気そうには見えましたが、時折塞いだ顔も垣間見えました。ですが、私に心を開いて下さってからは、どこか、安心されたようで。私とこの国、パンターを受け入れて下さったように思っていました」

「そう……」


それは、何だか分かる気がした。