「お姉ちゃん?」


病室では健はベッドに腰掛けていて。

勢いよく駆け込む私を不思議そうに眺めていた。



これは、夢? それとも、現実……?

目の前に、この世界にただ一人の弟がいる。

そのことが、泣きそうなくらいに尊くて、愛しくて……

私は思わず、健を抱き締めた。


「健……本当に、健なのね?」

「どうしたの、お姉ちゃん? 僕は僕だよ」


健は何が何だか分からない様子だったけれど。

私の胸には想いがいっぱいに湧き上がってきて……


「良かった、良かった……」


目からは熱い涙がとめどなく流れ出た。


「本当に、どうしたの? お姉ちゃん、大丈夫?」


ただならぬ雰囲気の私を健は心配そうに見つめて……

そんな彼を、私は真っ直ぐ、真剣に見つめた。


「健。すぐにでも、手術を受けましょう」

「えっ?」

「お姉ちゃん、頑張って働いて……もう、あなたの手術代、払えるようになったから。だから……」


涙ながらにそう言う私を、健は柔らかく微笑んで見つめた。


「あの、お姉ちゃん。そのことなんだけど、実は……」


その時だった。


「香坂 健くんのお姉さんですよね?」


病室に入ってくる……聞き慣れた声。

愛しくて堪らない……温かくて優しい声が聞こえた。