黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス

「奈美、私を殺しなさい。それであんたの気が済むのなら……そして、二人を早く、解放してあげて」


凛と放ったその言葉と共に、私は精一杯の力を込めて刺すように彼女を睨んだ。


「えっ……」


そんな私の返答が意外だったのだろうか。

奈美の顔色が変わり、目は少し泳いで……狼狽えたように見えた。


「あんた、正気? こんな血も繋がっていないようなクソガキ共の代わりに死ぬだなんて……」

「血が繋がってなくても……ジョンとエマは私達の子供よ」


私の右手には白い痣が浮かび上がって……全身からは青い光を放ち始めた。


「だから……私は命を賭けてでも、二人を守る。たとえ、それが死ぬことだとしても。あんたには負けない!」


私はキッパリと言い放った。

奈美はそんな私を忌々しそうに睨んで……そっと立ち上がった。


「ふん……この、偽善者が。偽善に酔い痴れて死ぬがいいわ。来なさい。私が、この剣でぶっ刺してやる」


私もすっと立ち上がる。


「ええ。やってみなさい」


この目ですっと、奈美を見据えて。

あんたには屈さない……

そんな、強い意志をもって睨む。



「麗……!」


そんな私の背後から、レオパードが力の限り呼び止めた。

でも……


「レオパード……ごめんなさい」


私は彼の声に応えることなく、奈美が剣を持って歩み寄る『死』を選ぶ。

私の目には、捕縛されたジョンとエマが涙を流しながら首を横に振るのが見えた。


幼く純粋なジョンとエマ……

この二人の美しい命が、私のこの傷だらけの汚い命を捧げることで救われるのなら……。

剣を持つ奈美を見て、私の胸に様々な想いが湧き上がった。