黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス

「誰が、ただで助けてやるのよ。こいつらを助けたのは、取引の材料にするためよ」

「取引……?」


その言葉を反復する私に、奈美は耳を疑う言葉を放った。


「そう。こいつらを本当に生きて返して欲しいと言うのなら……麗。私はこの剣であなたを突き刺すわ」

「えっ……」


(奈美? 何て……ことを言うの?)


顔から血の気が引いて……言葉を失う私を見て、奈美はにやりと笑った。


「だから……この場であなたが私に殺されると言うのなら、この二人を解放してやるってこと。それが嫌なら、私はすぐにこのガキ共を殺すわ。
さぁ……麗。どっちが良いか、決めなさい」


奈美は邪悪な笑みを浮かべていて……その側のジョンとエマは、青ざめてガクガクと震えていた。


「なんて……奴なの」


私は奈美を睨んだ。

こんなに幼い子供を……私達の可愛くて仕方のないジョンとエマを、そんなことに利用するだなんて……!


こいつはもう、私の知っている奈美じゃない!

私の中で憎悪の炎がメラメラと燃えた。



奈美はまるで、見透かしているかのような目で私を見ていた。


「どう? 私のことが憎いでしょう? でも、あんたはどうせ、こんなガキ共なんて助けたりしないわ。だって、どんなに偽善者ぶっていたって、所詮、あんたも人間なんだから」

「いいえ!」


私はキッパリと、奈美のその言葉を否定した。