強い気持ちをもって語るジョンの胸には、熱い想いが湧き上がった。

自分達兄妹は、母親を病気で亡くして……孤児となった。

飢え死にしそうだったところを、コヨテに拾われた。

最初はウルフの兵士こそ、命の恩人だと思っていた。

しかし、それは、幼い容姿を武器に敵の寝首を掻く……そんな卑怯な企みに利用されるため。

一連の訓練を受けた自分達は、『病気の母親を持つ兄妹』を演じて、全ての状況を誂えられたあの家へレオパードとうららを誘い込んだ。

それからずっと、母を忘れられないエマのことをフォローしながら……『母親を殺された不幸な兄妹』を演じた。

予定通りにパンターの懐に潜り込んだ際も、最初は計画を実行するつもりだった。


しかし、パンターでの生活は、ジョンにとってはそれまでで最高に幸せな日々だった。

レオパードの温かさ、麗の優しさ……その全てに触れて、徐々に決意は揺らぎ始めた。

そして迎えた、『計画の日』の前日。

自らの不注意でうららに宝玉の欠片を見られた、あの日のことだった。