その日……奈美の誕生日。

朝からすでに、彼女の胸はドクン、ドクンと高鳴っていた。


(ついに、あの女の始末をする日がやって来たわ。それも、奇しくも私の誕生日に……)


それは、麗を自らの手にかけることへの興奮。


(手筈通りであれば、きっと今日中に最後の四天王が麗達を捕縛するはず……)


そして、奈美自らがパンターへ乗り込み、麗を殺す。


彼女の頭には明確に浮かんでいた。

自らを見た瞬間の、麗の驚く顔。

剣で貫いた瞬間の、手の感触、苦痛に歪む顔、断末魔の悲鳴……。

想像するだけで、彼女の脳内には快感が駆け抜ける。

それは、自らのプライドを引き裂いた者……それを今度は、自身がズタズタに切り裂くことへの高揚。


(ふふふ、麗。美しい顔を醜く歪めるがいいわ。そして……元の世界でこの私に惨めな想いをさせたこと、死を以って償いなさい)


奈美は歪に顔をゆがめる。

彼女の胸の中では、あの日……あの『夏の日』の忌々しい記憶が反芻していた。