ドールを倒しウルフ軍を退けたパンターでは、束の間の穏やかな日々が戻って来た。


「ちょっと、ジョン! 私のブラ、返しなさいよ!」

「何これ? この膨らんでるのって、何につけるの?」

「あ……あんたは知らんでいい!」


いつも通り、ジョンとの追いかけっこ。

ほんっ当に憎たらしいガキだけど、こんなことをできている間が幸せなんだな……。

二回も戦乱を経験して、二回も敵をこの手にかけてしまった今となっては、そう思う。


イライラしながらも……そんな温かな想いが私の中に溢れていた時だった。


「あっ……」


私が追いかけていたジョンが、小さな石を落とした。

黄色く光る、小さな石……


「ジョン、何、これ?」


私の所に転がってきたそれに手を伸ばした瞬間……


「お兄ちゃん。もう! 何してるの」


傍らから出て来たエマがさっと、その石を拾い上げた。

ぷくっと頬を膨らませて、石を大事そうに手の平で隠している。


「エマちゃん。その石は?」

「これはお母さんの……大切な形見なの。それなのにお兄ちゃんは、落としたりして!」


目に涙を浮かべてプンプンと怒るエマに、ジョンはポリポリと頭を掻いた。


「うん。エマ……ごめん」

「そっか、お母さんの……」


ちょっとしんみりとした雰囲気になって。


「……はい」


ジョンは素直に私のブラを返してくれた。