司令塔のナエイハが消滅したウルフ軍は、まるで蜘蛛の子を散らすように散り散りに逃げて行った。

ウルフとの戦いの開幕は、勝利ということになったのだった。




「サーバル! 勝ったよ!」


ブランに戻った私は、空元気を振りまいた。

私の心に痼りはあったけれど、何より彼を心配させたくなかったし、勝利は普通は嬉しいものだから。

だけれど、彼の顔は晴れなかった。


「うらら、ありがとう。アルビンと、この城を守ってくれて。だけど……無理してない?」

「えっ、無理? どうしてさ? そんなの、全然……」

「だって……うららはいつも、無理している時には、元気を『作ってる』から」

「えっ……」


私はドキッとした。

自分の心の内を見透かされていることもだったけれど、それを口にした彼が……誰でもない、健に見えたから。

いつも私が彼のために無理をして、体を売っていた……そのことさえも、見透かされていたような気がしたから。


サーバルは私の内心を覗いたかのように、眉を寄せてすまなさそうな顔をした。


「うらら。ツラい想いをさせて、本当にごめん。僕が弱いばかりに……」


そんなことを言う彼は、まさに健そのもので……

私は堪らず、彼をギュッと抱きしめた。