「じゃあ、真優。お母さん達は、後から行くから」

「はーい」


「気をつけてね。電車、乗り遅れないようにね」

「はいはい」



玄関まで見送りに来たお母さんとそう会話すると、玄関のドアを開けた。


「いってらっしゃい」

「いってきます」


閉まるドアの隙間から手を振り、外に出た。




家の前の道路に出ると、制服のポケットからスマホを取り出した。

高校に合格した時に買ってもらった、スマホだ。
アドレス帳には、中学の同級生と家族…もちろん、お兄ちゃんも入っている。
まだ一回も、電話したこともラインしたこともないけど。



えっと…電車の時間はー…


スマホで電車の時間を調べていると、背後から足音が聞こえた。




「遅い、真優!電車に乗り遅れるじゃねぇか」



「光太郎!!?」


振り返ると、後ろに立っていたのは光太郎。


「入学式に遅刻したら真優のせいだからな」

「!?」

光太郎も同じように、新しい制服を着ている。



「私のせいって、約束してないじゃん!」



「昨日、ライン送っただろ?既読ついたから、見たもんだと思ったんだけど」


「ラ…イン?」


スマホを持ち始めたばかりで、いまいち使い方がわかっていない。


とりあえずアプリを開いてみると、確かに光太郎からメッセージが届いていた。


けど、見た記憶がない。


「使い方ぐらい早く覚えろよ、バカ真優」


「!?ば…バカって言わないでよ!!バカ光太郎!!!」


「あ!?」


喧嘩がヒートアップしそうになった時ー…




パン!!!



「「!?」」



誰かが手を叩いた音が聞こえ、身体がビクっと跳ねた。