掴まれていた腕が、少し痛い。 「…痛い?」 お兄ちゃんが、背を向けたまま聞いてきた。 「…うん」 腕をさすりながら、小さな声で返事をした。 「悪かった」 そう言うと、お兄ちゃんは再び歩き出した。 「あ…待って…」 慌てて、その後ろ姿を追う。 お兄ちゃんの数歩離れて歩く。 お互いに何も喋らない。 「…」 てっきりお兄ちゃんは、優華さんと一緒に帰っちゃうんだと思っていた。 妹より彼女ー… けど、お兄ちゃんは私を選んでくれた。 …嬉しかった。 思わず、頬笑んでしまう。