「それなら、いいけど…」
納得してくれた声にほっとし、しがみついていた腕を離した。
「じゃあ、家まで送ってく」
「…え!?」
ほっとしたのもつかの間、今度は家まで送って行くと言った。
「えって…このまま一人で帰すわけにはいかんだろ?」
そう言いながら、山崎先生は立ち上がった。
「家に入るのを見届けたら、俺は学校に帰るよ。報告しないといけないから」
先に立ち上がった山崎先生が、まだしゃがみ込んだままの私に手を差し伸べてくれている。
その手を取ると、立ち上がった。
「白石ん家どこ?」
キョロキョロと辺りを見渡す、山崎先生。
「…」
家に帰るー…
ドクン、ドクン。
再び胸が苦しくなり、手で胸を抑える。
今の私には、それができない。
ドクン、ドクン。
お兄ちゃんの居る家に、私は帰れないー…



