「少し話がしたい。そこの侍女よ、この女を少し連れて行っても良いか?」
何を考えたのか私と話をしたいという王子様。
もしかしたら『気にしていない』と言いつつも、後で仕打ちがあるのだろうか。
そう思うとついて行きたくない………!
私はギャビンさんに目で訴えてみたが、
「……私(わたくし)に許可をお取りになられるなど、恐れ多くございます。どうぞ心ゆくまで連れて行って下さいませ」
私の抵抗は虚しくアッサリと許可が出てしまった。
話がしたいと口にした王子様が私を連れてきた場所は、先程チベットさんと訪れた執務室であった。
「そこの椅子にでも腰掛けよ」
「いえ…………侍女の分際でそのような事は」
「俺が良いと言ってるんや」
断っても『座って良い』と仰り続ける王子様のお気持ちに応え、
「…………………では、失礼致します」
私は恐る恐る執務室の会議用だと思われる椅子に腰を下ろした。



