その場から離れようと足を動かしたが、背中越しに聞こえてきた言葉で俺は足を止めた。
「騎士になる奴には何パターンかある。貴族だったから受ける奴、元々が騎士一家の奴、国の為に働きたい奴、稼ぎたい奴、カッコいいからとステータスの為になる奴。まぁ、分からないでもないけどね(笑)」
「何が言いたい…?」
「他にも騎士になる奴ってのには色々種類があるよね。何か明確な目的の為に入る奴……とか(笑)」
――ドクンッ。
なぜかそう言われたとき、心の内側を読まれたような気がしてゾッとした。
「な、何だよ……」
「つまり何が言いたいかと言うと、君も俺も入った目的はさほど変わらないのさ」
「意味が分からねーよ」
「警戒しないで(笑)ただ、あの宮殿で君であれば信じられる存在になると思っただけだよ。あ、俺ね?姉が二年前ぐらいに悪い奴に捕らえられちゃってさ。場所は分かってたから必死になって取り返そうとしたんだ。アジトまで行って見張り役の雑魚も倒して、姉を連れ帰るつもりだったんだけど……」
「どうしたんだよ…」
「無理だったんだ」
「む、無理って……」
「既に殺されちゃってて。何やら聞こえてくると思ったら奴らはこう言ってたんだ。『あんなの売り物にもならねー』って。昔身体に付いた火傷の傷跡を見つけてしまったらしいけど、それなら殺さずに帰してほしかったよ。勝手に連れてこられて勝手に殺される。これほどまで理不尽な事はない……」
確かに酷い……俺なら憎まずにはいられない。復讐を誓うけど…。
「なんで騎士に?」
俺はもう一度聞いてみた。
「……それに関与していたのが騎士だったんだよ。あの騎士団の制服を着て、貴族と密会していた。きっとその貴族の護衛とかもしていたんだろうが、俺はあの時誓った。騎士になってその関与していた騎士を潰す。そして貴族も抑える。この国の治安を良くする為に志願した。まさか受かるとは思ってなかったけどな(笑)」
こいつにはこいつなりの辛い過去があったのか。
見た目だけで悪い事を言ってしまった……。