――――コンコンコン。

「陛下、ファンです。御出発の準備が整いました」

少しするとファン宰相様が部屋にやってきた。

「やっと我が国に帰れるのだな」

ふぅ……と軽く息を吐きながら陛下はソファーから重い腰を上げる。

「あ……荷物持ってこなくちゃ」

起きてから直ぐ何も準備しないで陛下の元へきてしまったから、恐らく荷物は椅子の上だ。

取りに戻ろうと足を向かわすと、

――グィ…ッ。

「どこへ行こうとしている?出口はこっちだ」

「あ……いえ。荷物がまだ…」

私が陛下に向かってそう言うと、なぜかため息をつかれた。

これは一体何のため息だろうと首を傾げると、

「荷物は既に侍女に運ばせたゆえ、そなたはただ余の隣で堂々としていればよい」

戻ってきた来た言葉は先ほどの私の行動が無意味だというような言葉。

「あ……」

よくよく考えてみれば妃が荷物を運ぶなど可笑しな行動だと言う事に気付く。

ガルゴ王国の王子様の元で侍女をしてしまったからか、再び私を使用人体質へと変えようとしている……。

やっとメイドの頃の感覚が抜けたと思ったのに……危うく陛下に恥をかかせてしまうとろこだった。