「陛下……」

「なんだ?」

「あの……また里に戻ったりは~……」

「ダメだ」

流石に何度も……しかもさらわれた事件の後でこのようなお願い無理だとは思っていたが、ここまで即答されるとは。

「まだ両親には真実を伝えていないので、もしその事実を知ってしまったら混乱すると思うのですが……」

「確かにそれは驚くかもしれぬな」

「で……では!」

「だが、無理だ」

………やはり無理か。

となれば…手紙か何かを事前に送っておいた方がいいかも知れないけれど、直ぐ執り行うのであれば、手紙を送ったとしても知るタイミングは結局のとこ同じかもしれない。

つまり公表より先に両親に伝える手段がないと言う事か……。


「そう落込むのではない。確かに知るタイミングはあれだが、その両親とやらそこまで不安にはならないはずだ」

「……どうしてそう思われるのですか?」

何だか陛下のお言葉は確信的な何かを感じる。

「春期騎士及び兵士志願者名簿の中に珍しい名があったのを思い出したのだ。身分的に兵士枠であったが……どうも兵士にするには惜しい人物だとクレハが話していた」

「そう……なのですか」

なぜ今の話が先ほど陛下がおっしゃった確信的なお言葉に繋がるのかは分からないけれど……。

「結果は帰らねば分からぬがあの者であれば受かるだろうとまで言っていたのだ。そんな奴がここへ来たのだから、反対に安心しているかもしれぬな」

いずれ分かるという事よね?

取り合えず両親には迷惑をかけるけれど……後で手紙を送っておこう。