「もうじき出発しようと思うのだが、そなたは問題ないか?」

「問題……ですか?」

「あぁ。疑問に思う事や不安事、その他にあるのであれば出発する前に申してみよ」

不安事であれば……一つある。

それは正妃の件だ。

昨日陛下が言っていたように帰って直ぐ執り行う事に関しては何とも思わないけれど、陛下の正妃。つまり国母となると……国中に話が知れ渡るのだろう。

ただでさえ妃はどうのこうの~……と噂が他国にまで知られているのだから、正妃となればそれよりも遥かに違うのだろう。

例えば記事の書き方とか、その配る範囲………とか。

国の端だとは言え恐らく里や近くの町にまでその事は知らされるのだろう。

そうなれば両親に確実に知られる。

何せお父さんは国境近くの入国管理局で働いており、立場的には国に仕える者である。

そのような機関に知らされない訳がない。

特に黒髪であることなどの特徴をあげられてしまったら確実に私だと分かるし、かなり戸惑う姿は想像が出来る。

だって自分の娘が知らない間に知らない男の元へ嫁いで……しかも相手はこの国の陛下だなんて。

混乱しない人の方がおかしい。

だからせめて直接その事実を伝えた方が、まだ混乱はしないと思うのだけど……そうなれば陛下を説得するしか道はない。