「おはようございます、お妃様」

「二人ともおはよう」

ドアの前には昨日と同じく護衛としてクレハとギャビンが立っており、私の姿を見るとそう言ってお辞儀をした。

「おはよう二人とも」

「陛下は中におられます」

私が何の用事でここへ来たのか分かっていたようでそう私に声をかける。

「ファン宰相様はご一緒でないの?」

「はい。ファン宰相様はガルゴ王国の宰相様との会談に出かけられましたので、中には陛下おひとりでございますが……ファン宰相様にご用事でしたでしょうか?」

「いえ………」

別に陛下と二人きりの空間が気まずくはないのだけど……ファン宰相様がいてくださった方がまだ動揺せずに済みそうだと思ったのだ。

居ないのであれば一人で中に入るしかない。

――――コンコンコン。

静かな空間にノックする音が響き渡る。

「アニーナでございます。中に入ってもよろしいでしょうか?」

外から中に声をかけると、直ぐに許可する陛下の声が返ってきた。

「失礼致します」

――――ガチャ…。

ゆっくりドアを開けると、そこには飲み物が入れられたカップ片手にソファーの上に腰を下ろした陛下の姿があった。

「陛下、おはようございます」

先ずはドレスの裾を掴んで陛下に向かってお辞儀をする。

対する陛下はいつもと変わりない反応で……無駄に気にしていた私が何だか間抜けに感じる。

「妃に飲み物を」

「かしこまりました」

陛下は近くに控えていた侍女にそのように命令すると、目の前のソファーに腰を下ろすようにと私に声をかける。

「失礼致します」

数分もしないうちに先ほど頼まれた飲み物……紅茶の入れられた容器が私の前に置かれた。

紅茶の良い香りに誘われ、一口飲んでみると何とも優しい甘みが口中に広がっていく。

これは美味しい紅茶だ…!

もう一口……と紅茶を堪能していると、目の前に座る陛下から言葉をかけられた。