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王妃とは国母でもある。国の頂点である陛下を支え、そして国をも支える重要な立ち位置。
皆のお手本となり、常に正しい判断が必要となるその座に……私がなど。
恐れ多すぎる。
「正妃が必要になられたのでしたら、どうぞお気になさらず高貴な血を引く方から娶られて下さいませ。それが……その国の幸せとなりましょう」
自分で言っておいて何だか少し胸が痛むけれど……これは初めから覚悟をしていた事だ。
庶民である私の血が混じってしまってはこの国の顔に泥を塗りかねない。
陛下もその事はご存知のはずなのだが……。
「どうかもう一度お考えほど、お願い申し上げます」
私は大事な話にそう言って頭を下げた。幸いにも皆話に夢中で気づいてはいない。
「………来るがよい」
「へ、陛下……っ?」
反応を確認しようと顔を上げると私は陛下に腕を引かれるがまま、会場を後にした。



