「なぁ……あの姫君どこの方だ?ここにいると言う事は同じ王族で間違いないはずだが……見たことがない」

「あぁ。あの艶やかな黒色の髪に透き通る白い肌……美しい」

男共の視線が自分に集まっていることに気付いてもいない妃は、デザートが乗った皿を手に取り美味しそうに食べている。

無自覚というか……鈍感というか。

もう少し妃には自覚してほしいものだ。


―――――カツカツカツ……。

「アニーナ」

「……へ、陛下!お話は終わられたのですか?」

あんなに女共に囲まれていたというのに、妃は何も思わなかったのだろうか気にする顔色一つ見せない。

「あぁ。挨拶は済んだ故後はゆっくりするだけだ」

「そうなのですね。では、何かお飲み物をお持ち致します」

妃は立ち上がって飲み物を配っている侍女の元へと向かうと、鮮やかな色をしたお酒の入ったグラスを持ってきた。

「陛下どうぞ」

「頂こう」

何というか…もう使用人ではないのだが、よく気の利く女だ。

「……これはまた余の好きな味だ」

「陛下は甘い物が苦手でいらっしゃいますので、少し辛口のお酒に致しました」

「………ほぅ」

妃は良く分かっている。

あのコーヒーと言いバタークッキーと言い。