「お気遣いくださいましてありがとうございます」
緊張をほぐすために冗談を発した国王様に、私は口元に手を添え『ふふふ』と笑って返した。
ここでまともに返事をしたら余計なことまで聞かれてしまいそうだ。
「今回アルヴァンは欠席しているが気にせずこの会を楽しんでいってくれ」
……アルヴァン様は欠席されているのね。
そういえば私達が王宮へ向かう際、まだ離宮へ居たのはその為だったのか。
「では、失礼する」
陛下に手を引かれ私はその場を後にすると、急に挨拶が出来なかった王族の方々が陛下の周りに集まってきた。
「お初にお目にかかります!私(わたくし)は第一王女の~……」
「抜け駆けはずるいですわお姉様!私(わたくし)は第三王女の……」
気づけば私は輪の外に放り出され……綺麗な女性方が陛下を取り囲む。
心なしか皆目がハートだ………。
「お似合いだな…」
王族であるのなら仮に陛下の妃になった場合、誰も文句は言うまい。それどころか繋がりを得ることができ政治的にも有利になるので、官僚達はきっと喜ぶのだろう。
私は使用人上がりの一般人なので妃と言えど位は高くない。
陛下が寵愛なさっている妃という勘違いで私の事を悪く言う者はいないけれど、もし新しい妃様を迎えたのなら………変わってしまうだろう。
身分にふさわしくないというのは自分が一番わかっている。
それでも陛下のお側にいたいと望んでしまったのは我儘だったのかもしれない。
……って考えても仕方ないか。取り合えず陛下が挨拶をされている間に何か食べようかな~…。
あ、あっちにデザートが…!
私はデザートに引き付けられるがまま、その場から静かに離れた。



