暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】



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「お初にお目にかかるアンディード帝国のお妃よ。吾はこのガルゴ王国の第63代目国王であるオリバー・プルートス・イル・ガ・チェトス・リニア・ガルゴと申す。この度は息子が大変ご迷惑をおかけしてしまったようで申し訳ない」

会場の中は着席形ではなく立食形で所々のテーブルに軽い食事が並べられており、皆が片手に飲み物を掴み、それぞれ好きな場所で会話を楽しんでいた。

王族の集まりだと聞いてはいたが……かなりの数が揃っている。

会場に到着すると私は陛下と一緒に国王へ挨拶をしに向かった。

「ご挨拶遅れまして失礼致しました。私はアンディード帝国の妃であります、アニーナ・ミドル・アンディードと申します。どうか今後お見知りおきを」

ドレスの裾を軽く掴むと私は国王様にお辞儀をする。

「アルヴァン様の件は……お気になさらないで下さいませ。あれはあの場所で起きた事であり、国王様がお気になされる事ではございません」

「これは何とも心優しい妃殿だ(笑)」

私のその言葉に国王様は、『ははは』と笑いを見せる。

「それにしても噂で聞いてはいたが………実に珍しい髪をお持ちのようだ」

その視線は私の髪に向けられる。

「黒色の髪をした種族は既に滅びたのだと思っていたが」

「……今何と仰られましたか?」

「妃殿は知らないのか?どこの国かは分からぬが離れた小さい国には、似たような黒色の髪をした人間がたくさんいるそうだ。皆それ見たさに探し回ったそうなのだが、結局その国を見つける事は出来ず、ついには滅亡したのだと話していたが。もしや妃殿もその末裔だったりしてな(笑)」

国王様はそう言って冗談っぽく笑ったが、私にとっては今の情報はかなり驚きでしかなかった。