暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】



「確かに距離はございますが恐らく問題はないと思います」

「侍女の分際でなぜそのように思うのだ?」

「恐れながら申し上げますが、ガルゴ王国はご存知の通り他国との貿易が盛んな国でございます。ですので距離など特に問題はございません。出荷する際は温度調節可能の特別な容器に入れ、仮に揺れても傷みが発生しないように固定して運んでおりますので、そのような事例が上がった事はこれまでございません」

「……ふっ。そうであったな。ガルゴ王国は貿易で成り立っているゆえ、そのような失敗は先ずしまい」

陛下は理解したようにそう笑うと話を戻した。

「ここまで来たのだ。記念に契約しよう。我が妃もそのように望んでいる見たいだしな」

そう言って私の方をちらっと見る。

と言う事は……アンディード帝国でもあの味を楽しむことが出来るようになるんだ…!!

「陛下…ありがとうございます」

「気にするでない。貿易が出来ると言った点ではこちらも視野を広げる良い機会になると思ったまでだ」

陛下はいつもとあまり変わらない冷めたような表情であったが、その行動が私にとっては嬉しかった。