しかし側室だからと言って不満などはない。
そもそもメイドである私が陛下の隣にお側にいれるだけで奇跡のようなものだから、もし陛下が新たに正室の妃を迎えるとしても、それはそれで良いと思っている。
そう……………それで良いはず。
「……そう言えば、お妃様にお渡しするようにと頼まれていたものがございますので、少々こちらにお願いしても宜しいでしょうか?」
「あら、何かしら?」
私は侍女に誘導されるがまま部屋へと入り、それらが済むと侍女に聞いた陛下の居られる西の客間へ足を向けた。
細かい細工の施された木製のドアの前にクレハとギャビンは立っており、
「クレハ、ギャビン。お疲れ様です」
そう言葉をかけると二人は私にピシッとお辞儀をした。
「動かれて……お身体の方は宜しいのでしょうか?」
「えぇ。休ませて頂いたお陰様で疲れはとれたわ」
勝手に動き、そして自分のせいで危険に晒されたというのに、クレハは何か負い目を感じているようだ。
「……クレハ。貴方は何も気にしなくていいの。反対に皆に迷惑をかけた私がそう感じなくてはいけないのに…ごめんなさい」
「な……なぜお妃様が謝れるのですか…っ!!?私がもう少し周りを把握し最善の準備と努力をしておれば、お妃様をこうも危険な目に合わせずにすみました。私の能力不足のせいで大変すいませんでした」
普段はあまり表情の変わらないクレハだったが、この時ばかりは申し訳なさそうな表情を見せた。



