「ユリノーゼ……」

「え?」

「気軽にユリノーゼとお呼びください。アニーナ様」

友達がいた記憶はこれまででなかったけれど、アニーナ様であれば親しげにそう名を呼んでほしい。

スフィア様でなく、ユリノーゼと。

……あ、でも急に親し気な態度をとって無礼だと思われても嫌だ。

「もし……呼んでいただけるのであればで構いません」

私だけ仲良くなった気でいたけれど、やはりお相手はお妃様であるから態度には気を付けないと。

「何を考えているの?」

「あ……いえ何でもございません」

「いえ、何だか悩んだ顔をしていたわ」

アニーナ様は意外と……というかかなり鋭い。

しかし、さっきの事をアニーナ様にお話しするわけにはいかず、

「お気遣い頂きありがたいのですが本当に何もないのでございます。ただ……まだ疲れの方がとれていないものでして」

「そうなのですね。ユリノーゼは私の弟と近い歳であるからか、余計に心配してしまいます…」

アニーナ様はそういうと苦笑してみせた。