暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】



「なんや、死罪が良かったんなら今からでも用意しようか?」

「アルヴァン様がそうしたいと仰るのであるのならば構いません」

フィグリネの言いたい事は俺が一番良く分かる。

罪の無き者に罪を着せようと悪巧みをした事や、自分勝手な行動で関係のない他人を巻き込むだけでなく、一歩間違えたら国や民さえも混乱するような事態になりかねなかった事を踏まえると、

死罪……と言うのが適切やったやろう。

もちろん俺もそうするつもりやった。

ユリノーゼの元へ行くまでは。

様子を伺いに顔を出したとき、ユリノーゼは話をする中で俺にこう言ってきた。

『どうか……死罪だけはやめてくださいませんか?』

自分に陰湿なイジメをし、その上身に覚えもない罪を着せられ危うく命を落としかけたというのに、ユリノーゼはなんと『命だけは助けてほしい』と言ったんや。


「………………………これはユリノーゼからの願いや」

ビックリして思わず『あんな事をされといて許すつもりなんか?』と聞いたら、『…許したわけではございません。ただ……フィグリネ様と親しくして頂いた頃の懐かしき楽しかった日の思い出が脳裏に浮かぶのです。それだけが原因とは言いませんが、死んでしまえば人はそれで終わりです。罪を背負って生きる事も、やり直す事も出来なくなります。私は…………』


「『機会さえあれば誰しも自分の行いを振り返り、変れるものだと思うのでございます。初めの頃のように』………とな」

その与えた機会でもしかしたら自分の命が再び危うくなるかもしれんのに、すごい事を言うものやわ。

本当なら死罪が妥当やったけど、ユリノーゼからあそこまで頼まれたから国外追放と結果を下した。



「……………………これは機会や。国が、俺が、そしてユリノーゼがフィグリネに与えた最後のな。これを無駄にするのか、しないのか…この先自分の頭で考え悔いのないよう好きに暮らせ」

「…………………………かしこまりました」


地面に座るフィグリネはとても小さな声でポツリと返事をし、

俺はフィグリネに背を向け、出入り口に向かって足を進める。

その中で思い出したのは、これまでフィグリネと出席した晩餐会や宴会での一時や、初めて対面した時の初々しい心情らで、

どれも楽しかった日々として頭の中で再生される。

軽く目を閉じ……………そして再びゆっくりと目を開くと、前から差し込む外の光に向かって足を速めた。