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あれからあっという間に数日が経過した。

私はフィグリネ様の元で問題なくやっているが、あれからスフィア様はどうされているのか気になりつつも、毎日を送っている。

「テリジェフ」


フィグリネ様があなたをお呼びよ。直ちに行きなさい」

「フィグリネ様が……?分かりました」

この日は侍女を通しそう伝えられ、廊下の掃除をしていた私はすぐさまフィグリネ様の元へ向かった。

―――――コンコンコン。

「フィグリネ様。テリジェフです」

フィグリネ様がいると思われるドアの前からそう声をかけると、

「待っていたわ。入りなさい」

いつもと何も変わらないフィグリネ様の優し気な声が中から聞こえてきた。

「失礼致します」

お辞儀をして中へ入ると、そこには鏡の前で手に持つアクセサリーを首元へあて、オシャレを楽しむフィグリネ様の姿があった。

「実は貴女に今日は頼みたい事があるの」

中に入った私を見てそのアクセサリーと一旦机の上に置いた。

あの日ぶりに見るフィグリネ様はとても穏やかな表情をされており、私が恐れた方とはとても思えない。


「あら、安心して?あの子には何もしないし、していないわよ」  

なぜフィグリネ様はそう思ったのか謎であるが、していないと知って少なからず私は安心した。


「………作用でございますか」

「今回貴女をここへ呼んだのは言ったでしょう?頼み事があると」

「…それは、一体何でございましょう?」

他にも優秀な侍女はたくさん居るのによりによってなぜ私なのかが引っかかるところだけど、最近妙に忙しそうにしている他の侍女を見ていると、少し頼みずらいのは分かる気がする。

唯一忙しそうにしていないのは私ぐらいか………。

そう思いつつ返事を待つ。

フィグリネ様の口から出てきた内容とは私にとって少し意外なものであった。

「今日私(わたくし)のこの部屋で側女を呼びお茶会をしようと考えているのだけど、そのセッティングを貴女に任せたいの」

「お茶会のセッティングをですか……っ!?」

「えぇ」

セッティングは出来るがスフィア様の元に王子様が訪れたあの一度しかした事がないので、そこまで自信はない。

あの時はいきなり来たので即興になってしまったというのもある。

「失礼ながら、私などがそのような大役を任せられるなど恐れ多く思います……」

他の側女様が来るという事はそのセッティングによってフィグリネ様の品と問われるし、私には荷が少し重い。

そう思うがこの日はなぜか引き下がってはくれなかった。


結局私がすることになり、あと数時間しか残り時間のないセッティングを急いで済ませていく。