しかし、この国では側妻様の格によって侍女の待遇も違うのだと自分の中で勝手に解決させる事によりその件は終わらせた。
持ってきた荷物を適当にその場へ置くと休む暇なく次へと移る。
侍女の部屋通りを抜けると一際異彩を放つ美しい外見の部屋の前でレイジュさんは足を止めた。
「この中にはフィグリネ様がいらっしゃるわ。私は今から仕事に戻るけれど貴女は挨拶を終わらせてから再び私のところまで来なさい。恐らく衣装部屋のお掃除をしていると思うから」
小さな声で私にそう言うと足音も立てずにレイジュさんは私を一人残して行ってしまった。
………この戸の中にフィグリネ様がいるのか。
何とも不思議な感覚だ。
フィグリネ様と最後にお会いしたのは初めてスフィア様がお茶会に参加られた日だったか……。
私は何度か深呼吸をすると中にいるフィグリネ様に向かって声をかけた。
「失礼致します。今日からフィグリネ様の侍女としてお世話させて頂きますアニ・テリジェフと申します」
「待っていたわ。どうぞ中へお入りなさい」
優しそうなフィグリネ様の声を聞き、指示されるがまま私はゆっくりと戸を開ける。
「失礼致します」
一礼して入ると何やら甘い紅茶の良い匂いが漂ってきた。
テーブルに視線を向けるとそこには紅茶のティーカップとお茶菓子が並んでおり、先程までお茶をしていた事が見て分かった。
「あら…気にしなくて良いわよ。別に邪魔されたとか思っていないから」
そう言って優しく微笑むフィグリネ様の言葉に毒のようなものを感じるが、今は気にするとこではない。
私も笑顔で返すのだ。
「フィグリネ様は甘い物がお好きなのですね」
「…えぇ。とても好きよ」
互いに『ふふふ……』と笑う。
客観的に見たら何だか異様な光景だ…(笑)



