暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】




「まさかこの者を引き留めていたとは言わないでしょうね?」

誰かと思えば先日こちらに見えられたフィグリネ様の使いの方……レイジュさんで、先程の鋭い声とは反対に次は怖いほど穏やかだった。


「い、いえ……っ!私達は何も……ね?」

「そうです!ただせっかく教えて下さった方ともう離れるのかと寂しくなって……」

まるきり嘘だと分かる言葉を並べ、演技する姿は恐ろしくもまさに才能だと思う。


「それなら問題ないわ。くれぐれも態度には気を付ける事ね」

見透かすような瞳に三人は表情を硬くした。

まるで全てを知っているかのよう………。



「支度の準備は済んでいるのか?」

「いえ……今からになります」

「そうか、ではすぐに支度せよ。案内する」

私が中々来ないのであれば迎えにきた理由が分かるが、まだ一時間も時間があるのになぜこの方は迎えに来たのだろう。

案内すると言っていたからもしかしたらその案内に一時間もかかるのかな?


そのような疑問を抱きつつも、取りあえず私はその方の言う通りに動く事にした。