―――――そして、お茶会当日。

いつもより更に美しくしたくて、気合を入れ準備に取り掛かる。

長い薄ピンク色の髪も今回はヘアアレンジを加え、ねじった髪を首の後ろでお団子にしエレガント風に。

これなら首元が暑くならなくて済むし、印象も良い。

服はタンスに入っているものからお茶会に合うものを取出し、アクセサリーなどの飾りをつけると完成。

サクラをイメージしたピンク色の可愛らしいスフィア様の出来上がりだ。

「では、行ってきます」

「どうぞお気をつけてくださいませ」

時間が近くなりスフィア様はリマーシャ様のお部屋へと向かわれた。

不安もあるが同席出来ない私はただ無事に楽しんで帰ってくるのを祈るばかりだ。

取りあえず、時間のある今庭園の作業にて心を落ち着かせよう。

私は軽く服を着替えると庭園へと足を運んだ。

そしていつものように水やりをしたり、花壇を耕したりと……作業を行っていた時、廊下の方からリフィア様のものではない声が聞こえてきた。

「これは素敵な庭園ですわね」

「えっ?」

その声に思わずその方向へ振り向くと、そこには紫色をベースとした美しい服に身を包み、大きな扇で口元を隠す、水色の髪をした女の人が廊下のところに立っていた。

「貴女様は……」

ここはスフィア様のハレムなので通常侍女やスフィア様に用のある者しか近寄らない。

見たところ侍女ではなさそうだし……服装的に側妻様?

「申し訳ありませんが、只今スフィア様はお出かけされておりまして、お帰りになられるのが遅くなると思うのですが……」

となると、スフィア様に用事のある側妻様と言うことよね。

でも、今までスフィア様に用事がありここへ態々足を運んだ側妻様はこれまで見たことがない。

………となると、この方は一体。

私が疑うような目で見ていたからか、その方は扇で口元を隠しながらフフ…ッと可笑しそうに笑った。

「そんなに警戒しなくても大丈夫よ。私は何もしないわ」

『私は』いうことは実行犯ではないのだろう。

しかし、なぜここへ…。

「スフィアに用事があったわけではありません。貴女に用事があって来たの」

「私に……ですか?」

「えぇ。少しお話しましょう」

優しそうにそう微笑む姿に、思わず警戒心などどこかへ行ってしまい、言われるがまま私は中へ案内した。

そして、即席ではあるが作り置きをしていた手作りお菓子と紅茶を机の上に並べ、取りあえずおもてなしをする。

「あら、このお菓子どこのかしら?」

お菓子を一口つまむとその方は驚いた表情をして、聞いてきた。もしかすると、お口に合わなかったのかもしれない。

「そ、それは失礼ながらお店で購入されたものではないのです」

「と言いますと?」

「大変失礼だと思いますが私の手作りなのです…」

外へ買いに行ってもよいがその間スフィア様が一人になるし、それに一人だけ毎回シェフに頼まずに外で買うってのもあれだと思った私は、手作りお菓子をスフィア様に振舞っていた。

スフィア様は毎回美味しいと食べてくれていたから何とも思っていなかったけれど……もしかしたら無理して食べていたのかもしれない。

そんな事を心の中で思いつつ、相手の反応を見る。

その方はそんな言葉にますます驚いた表情をしていた。