「ここに紅茶をご用意致しました。スフィア様には通常好みに合った甘さでお出ししておりますが、お茶会もしくは侍女不可の場合ですとスフィア様の好みに合った飲み物は出てくるか分かりません。人の好む甘さは人それぞれと言います。ですので、主催者側は好みの甘さに調節出来るよう、ミルクとお砂糖をご用意しているはずです」


「確かに何度か参加したお茶会でもそんな感じだったわ」

「では今回もそうでしょう。その際にティースプーンがカップの前に置かれてあった事をご存じですか?」

「えっと……うん。確かカップの前に置かれていたわ」

「使い終わったティースプーンはどうなされておりますか?」

「えっ……!最初置かれてあった位置に置いているけれど…?」

実は使い終わったティースプーンには置く位置というものが決まっている。

「かき混ぜた後のスプーンはカップの向こう側……後ろ側のソーサーの上に置くのが正解なのです」

カップの前や横、机の上に置くのは好ましくないらしい。

「ちなみにご存知と思われますが、ティーカップのハンドル……取っ手ですね。あれは指を入れて持つのではなく、つまんで持ってください。マグカップなど重たいものは落とさぬよう指を入れて持つように作られておりますが、小ぶりなティーカップはそうではありません。ちなみに、指をそろえるようにしてつまむと、とても美しく見えますので是非行ってください」


これらも妃としての勉強で教わった事で、お茶を出してもお茶を飲む事はなかった私は人前で優雅に紅茶を飲むということにかなり苦戦した思い出がある………。



「さて、実践してみましょう」

先程教えたことをゆっくりと確認して、何度も練習を重ねる。

それらがある程度終わる頃にはだいぶマスターしており、姿勢もまっすぐで、その佇まいはとても優雅だった。

これなら2日後のお茶会は大丈夫だろう。