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あれから早いこと数日が経過した。

スフィア様は何やら勉強意欲に満ち溢れ、私はと言うと庭園のお手入れに力を入れていた。

「この間植えた苗もいい元気だし、良い感じかも~♪」

太陽の光を浴びた苗や花達は、私が水やりをしたその滴にてキラキラと反射し輝いている。

先日悩まされた嫌がらせも多少はあるものの、明らかにやり過ぎというようなものはこれまで見られなかったので、ある意味良いのかもしれない。

嫌がらせの頻度も減って来たし、このまま飽きて止めてくれるといいのだけど。

次の作業へ移ろうとしたとき。

「アニ~!」

「スフィア様」

声のする方に視線を向けると、スフィア様が廊下から私を呼んでいるのが見え、すぐさまスフィア様の元へと駆け寄る。

「素敵な庭園になって来たわね」

「はい。毎日誠心誠意込めてお手入れしておりますので」

最初こそは酷かった庭も今ではだいぶ見れるようになってきた。

これも努力の成果……。

それよりも、私を探していたのだから何か用事があったはずよね!

「ところで、どうかなさいましたか?」

「あ、そうそう!アニは頭良い?」

首を傾げながらそう言って見せてきたのは、分厚い一冊の本。

「これは……この国にまつわる歴史書でございますか?」

本の表紙が『アルペ・チャ・サイル』と書いており、確か異国語で『アルペ』が国、『チャ』が事柄を指し、そして『サイル』が歴史となる。

つまり、それらを繋げると歴史書という意味に捉える事が出来る。

「そうなの!やはり、アニは詳しいのね!」

「あ……」

別に頭の悪い振りがしたかったわけでもないが、色々知っていると周囲に知られ疑われるのが嫌だったので隠していた。

まぁ、王子様にはバレてるけど……。

「あのね、私にこの本に書いてる事を教えて欲しいの!」

「この本について書いている事……ですか?」

「えぇ!私、まだこの国の難しい字はあまり分からないから……」

そういえばスフィア様はどこから嫁いできたのか聞いていなかったけども、大体今ので察しがついた。

交流の為、そして親国の証として他国へ嫁ぐ事はよくあるのだと聞いた事がある。

それによって例え小国であっても、大きな後ろ盾を得ることで、他の国から自国を守る事に繋がるから。

きっとスフィア様もそういった目的で嫁いだのかもしれない。……他国から。


しかも幼くにして………か。