その言葉に反応するように次々に皆が口を開く。

「最近入ったというあの?」

「どうやらアルヴァン様の推薦で侍女になったお墨付きの者らしいわよ。よほど、有名な名家なのかしら?」

ここの侍女の大半は昔から王家に仕える名家から上がってくるパターンが多く、代々に渡り侍女や従者の家系という家も少なくないそうだ。

その他は下級の貴族令嬢が勉強の為、結婚するまでの間王族の側で侍女として働くのだとか。


「仮にアルヴァン様お墨付きの者であれば手を出すのが急に難しくなりますね…。"フィグリネ様"はあの侍女をどう思われますか?」

フィグリネと呼ばれたその女性こそ、このお茶会を開いた張本人であり、この部屋の持ち主。

フルネームはフィグリネ・シュワルツ・ガルゴと言いアルヴァン様の第一妻で、このハレム内でも最長者という立場からアルヴァン様直々にハレムの責任者を任されている。


……現段階では。

正妃が決まるとなるともちろんハレムの責任者はその正妃に任される事となるので、もちろんその場合にはフィグリネ様はその任を降りる事となる。

「……そうねぇ。このハレムを乱す者であればアルヴァン様お墨付きの者であろうとも関係ないと、私(わたくし)は思うのだけど」

フィグリネ様は口元を覆い隠す事が出来るサイズの扇を、顔の前に広げた。

その言葉に同意するかのように、その周りにいた側妻達は首を縦に動かす。

「しかし、その者がこちら側へ来るのであれば……大変頼もしく感じるわ」

扇で口元は見る事が出来ないが、確実に口角を上げ不気味に笑っていた。

「一度お会いしたいものね」

扇を閉じ、艶やかな笑みでそう告げる姿はとても美しく先ほどの不気味さなど一ミリも感じさせない。