「……そう。言っとくけど私達は助けれないからね?」
「はい。チベットさんやギャビンさんへ被害のいかないように注意しますのでご安心下さい」
この争いに勝手に踏み込んだのは私だ。他の人に迷惑をかけるわけにはいかない。
「絶対に……守ってみせます。それでは」
私は軽くお辞儀をすると、資料を持ってその場を後にした。
大丈夫。何とかなる。
そう強く心の中で呟いて。
私が去った後のその場で二人は不安そうな表情を浮かべていた。
「まだここへ入ってきて何週間も経たないのにあんな事巻き込まれて……可哀想ね」
「チベットさん…」
「あのような側妻様どうしの争いでは、侍女の私達じゃどうする事も出来ないのにね。ただ苦しみそしてこの宮ですら追い出されかねないのに」
今までそうやってこの宮から出て行った人をチベットは何度も見てきた。
それはギャビンも同じ事。
「……でも、あの者なら大丈夫な気がします」
ギャビンがそう呟いた事にチベットは驚く。
「何がよ!所詮侍女じゃなんの権力も持たないのに」
「確かにそうですが、あの者なら側妻様を守っていけそうな気がするのです。何の根拠もありませんが、これまであの者のお世話係を続けて人を簡単に裏切るような者ではないと、そう思ったのです」
そんな言葉にチベットは大人しくなった。
「……まぁ、そうね」
不安そうな表情は抜けないものの、呆れたように顔を見合わせると『フッ…』っと笑った。