「そんな可愛いものであればいいけれど。誰も有無を言わせない側妻様だったのならそんな事はそもそも起きないけれど、失礼ながらスフィア様はまだ14歳の子供。しかも入ってきた順は下の方。上の側妻様の良く思わないはずよ」
確かにスフィア様はまだ若く、12人いる側妻様の中では8番目となる。
まだ後ろに4人いるがそれでも他の側妻様は『こんな娘に私達は負けたのか』と思ってしまうのだろう。
…………………それよりも一つ気になる事があるのだが。
「チベットさん。もしかして私が来る前、既にスフィア様はいじめられておりませんでしたか?」
「…………あなた」
「今に始まった事ではないのですよね?あの暗い部屋も荒れた園庭も、侍女が居なくなってしまったのも、そういったせいでなってしまったのではないですか?」
私はそう思わざるを得なかった。スフィア様と最初に会ったとき酷く心を塞いでしまっていた。
『私のような』と自分を蔑み、暗い表情をしていたわ。
それらは全て…………誰かの仕業なのでしょう?
「……………教えてあげてもいいけれど、一つ約束して」
「何でしょう?」
「あれは側妻様同士の戦いであり、私達侍女が口を挟む問題ではない。それに場合によってはあなたも死ぬわよ」
死ぬ……………か。
なんか物騒だけれどあの側妻様だけは、何ていうか放っておけないのよね。
「教えてください」
「……………ふぅ。いいわ。教えてあげる。これまでスフィア様に起こっていた事をね」
呆れたようにため息をつくと、チベットさんは過去について語り始めた。