「一瞬だけ優先順位戻させて」
「……えっ?」
「俺は……レギュラーなんかより聖梨が大事だ。俺の一番は聖梨だから」
「……っ」
真剣な眼差しで聖梨を見つめ、言われた言葉に聖梨の目の奥が痺れた。
「……今でも聖梨が好きだ」
ポロポロと勢い良く零れ落ちていく涙を持っていたハンドタオルで隠した。
家で鉢合わせたあの日。
ずっと見ていると言ってくれた聖梨が、突き放すことしか出来なかった雄楽に笑いかけた。
引退まで自分をごまかし続けようとした優先順位が雄楽の心をモヤモヤとさせる。
でもここでサッカーを投げ出して聖梨の元に駆け付けたって、絶対に聖梨は喜んではくれない。
だから、ほんの一瞬だけ。
自分の気持ちに正直な態度を取りたかった。
「本当に聖梨を優先順位の一番に出来る日が来たらもう一度言わせて欲しい」
ここで頷いてくれればきっと自分は、無理矢理じゃなくサッカーを優先順位の一番に出来る気がする。

