俺はマグロ漁から帰ると直ぐに彼女に会いに行った。

待ち合わせをしたのは、今流行りのチェーン展開している喫茶店。

レトロな内装でとても落ち着いた雰囲気のところだ。


「お母さんの具合はどう?」


「それが…あまり良くなくて…」


「そう…」


明らかに元気がない彼女に、俺はそれ以上どう声を掛けていいのか分からなかった。


「ごめんなさい!真吾さんに心配ばかり掛けちゃって。」

「いいんだよ。俺のことは。」


本当、彼女は優しい。


どんなに大変な時でも周りの事を考えてて、こんなに健気な彼女だから、俺は何かしてあげたいと思うんだ。


「でも!もう大丈夫ですから!次の手術が成功すれば、確実に良くなるって病院の先生が言ってたんです。
だから今頑張ってお金貯めてるんですよ!」


とても辛い状況なのに、彼女は俺に心配かけまいと無理に笑って見せた。


「手術費用どのくらいかかるの?」


「それは…」


彼女はうつむき、その美しい顔が曇ってしまった。

言葉を濁すってことは相当な額なんだろう。


「力になりたいんだ。お母さんの手術費用俺が何とかするよ。」


テーブルに乗る彼女の手を握ると、顔を上げた彼女が俺に微笑んだ。