どーせ無理なんだ。


分かってる。


分かってるから、私は今の生活を辞めない。


どんな危ない目に会おうと辞められない。


これでいいんだ。


遥さんとはもう会わないだろう。


憧れなんて忘れる。


私は私なりに、けがれた人はけがれた人なりに、自分の道をいきるんだ。


一人きりの家に戻ってそう思った。


でも今日は少しだけ、いい夢を見てみたい。







その後も、危険と隣り合わせの私の生活は変わらなかった。


遥さんのことも忘れかけていたある日の朝、起きたらメールが届いていた。


"雪ちゃんの話をしたら、1度会ってみたいって言ってる人がいるんだ。
気が乗らないなら無視でいい。
でも、もし良かったら12時に駅に来てもらってもいい?"


私に会ってみたい人?そんな人いるの?


いたとしたらだいぶ物好きだ。


行くのめんどくさいな…。


今日は家から出ない予定だったし。


"今日はちょっと"


なんとなくだるくて、私はそう返信した。


"用事あるの?"


すぐに返ってきた。


諦めると思ったのに。


無視していいとか言っておきながら、来させる気まんまんじゃん。


"ないですけど"


"じゃあ、この前助けたお礼だと思ってさ"


……そう言われると行かないわけにはいかないじゃん。


"まぁ、会ってみるだけなら"


いつもよりちょっと落ち着いた服装に着替えて家を出た。