美月ちゃんは椅子から立ちあがり、私の方に向かって手を広げた。


ハグするのかな?


そう思った私も、椅子から立ちあがって美月ちゃんのほうに手を伸ばし、ハグを……


「……いたっ」


しようとしたら、デコピンされた。


「やっぱりばかね。女となんて、ましてや雪ちゃんとなんて、ハグするわけないじゃない」


騙された…。


さっきからばかって言われ続けてるけど、嫌な気はしなかった。


私を追い詰めようとする目つきはしてなかったから。


「検査で来る時はまたあおにアプローチするから、そのつもりでね」


「望むところ」


「じゃ、私はもう行くから」


「ん」


私に背を向ける時、小さく「ありがとう」と聞こえた気がした。


私も、ありがとう。