「坪内さん、私やっぱり熱ありますね。ご飯食べられない。体温計壊れてると思ったけど違ったかー」
「体温計まで疑われていたとは、体温計に同情するな」

まあね、坪内さんのことも体温計のことも疑ってましたよ。
だって全然フラフラしなかったんだもん。

「無理に食べなくていいから。俺がベッドまで運んでやるよ」
「えっ?」

坪内さんは隣に来たかと思うと、ひょいと私をお姫様抱っこした。
軽々持ち上げられて焦る。

「自分で歩けます」
「病人はおとなしくしろ」

ジタバタする私に、坪内さんは一喝する。
だって、そんな、お姫様抱っこだよ?
体はくっついてるし、顔は近いし、そもそも私はこの宙ぶらりんな手をどうしたらいいの?
坪内さんの首に回せとでも?
考えれば考えるほど顔が赤くなってしまう。

「恥ずかしい~!」
「誰にも見られてないのに恥ずかしいことあるかよ」

私の言葉に坪内さんはため息混じりに笑った。