「秋山は何が食べたい?」
「坪内さんが食べたいものに付き合いますよ」

特にこだわりのない私は、坪内さんについていく。連れてこられたのは、最近できた可愛いパスタ屋さんだった。

「あっ、ここ!気になっていたんです!」

思わずテンション高く喜ぶと、満足そうな笑みが返ってきた。その王子様スマイルはやめてほしい。イケメンオーラがキラキラしすぎて目に毒だ。気にしないように、私は早々にメニューに目を落とした。

散々迷ったあげく、私はお店自慢のカルボナーラに、坪内さんは和風明太子パスタ。

「秋山のカルボナーラ美味しそう。一口食べさせて」

そう言ったかと思うと、私の返事も聞かずに自分のフォークで勝手にひとすくいしていく。

「旨いな、さすが店自慢のカルボナーラ」

満足そうに頷く姿を唖然と見ていたら、「俺のも食べる?」と言って自分のフォークでひとすくいして、私のお皿に和風明太子パスタが置かれた。

自然すぎて文句が言えない。
気にしなければいいのかもだけど、気になるでしょ。

「……このお店当たりですね」
「だな。でも、昼時は並びそうだな」

よく見ると入口付近にすでに待っている人がいた。

「早飯のときにまた来ような」
「はい」

返事をしたものの、また来よう”な”なの?
不覚にもときめいてしまった。そりゃ女子がことごとく落ちるわけだ。私ですらドキドキしてしまったもの。あんな優しい顔を見せられたら心臓がいくつあっても足りない。